はじめの1口

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ある山に多くの大ザル(猿)が住んでいた。大ザルは何びきとなく、人の仕掛けた先に酔いつぶれては生け捕りにされた。それを知った大ザルたちは、酒を飲まないようにと戒めあった。
ある日、数匹の大猿たちは、昨日子方から良い匂いがしてくるのに気がついた。酒の匂いである。大猿たちは、戒めあいながらも、そば会やってきた。そこで1匹のサルは、
「ひと口だけならよかろう」
と言って、みんなの前でひと口、口にした。それを見た他の大ザルたちも、そのサルと同じ言いわけのもとに、1口だけ口にした。
それがもう1口になり、2口4口になった時、酔いつぶれるからいけないのだから、酔いつぶれる前の1口さえ、やめればいいと言い訳をして、5口6口と飲み続けていた。
こうして、このサルたちが再び気がついたとき、このサルたちの周りには鉄の柵が巡らされていた。1匹のサルが
「あー、最後の1口さえ止めておけば」
と言った時、もう1匹のサルは
「いや、一の1口さえ止めておけば」
と口ずさんだ。(ひゆ経)

Y新聞は、Kと言う主婦がパチンコのために300,000円の借財を作り、離縁になったことを報じている。酒と勝負事と女狂いは、底なし沼のように、だんだんと深みにはまり体を壊し、家を破り、世の中を暗くする。そのもとは生け捕られた猿が「はじめの1口さえ止めておけば」と言ったように、わずかに気を許すことから始まる。
「寂しいからー」
「人もするからー」
「これ1回だけだからー」
「人付き合いだから-」
「生まれつきで仕方がない」とかと言い訳をして…
人は優れたものである。人には本心がある。やめようと思えば止められ、良いことをしようとすればできる。こうした言い訳をやめて、自分の務めに勤しむことを、み仏はさとしたもう。
「もし汝、すぐれたあるものにして、おのれの弱さを願わず大いなる希望と勇鋭なる心あらば、よろしく人間として最も優れた道に進むべし。汝まさに心を決すべし。
“我、今ここに、よりよき道を求めて、わき目もふらじ”
と。言葉に誓い、はっきり心を決めれば、むつかしいと思われていたサワリも、不思議となくなり、すべてのよきもの、おのれに向かわん。
迷いの道は、迷いの思いから生ず。覚悟しきれば、妄想は直ちにやみ、悪の種は消え果てん。」(菩提心論)

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