損の上塗り

NO IMAGE

ふと目の前を、自分の血を吸った蚊が飛んでいるのを見つけた私は、それをどこまでも追っかけていきました。蚊は白い壁に泊まりました。恨み心を止めない私は、その蚊を殺してしまいましたが、そのために、白い壁には赤い斑がついてしまいました。
血を吸われたと言う事は、もう済んでしまったことであります。その済んでしまったことを忘れないで、どこまでもくよくよしたり、仕返しをしたりしようとすることを愚か(おろか)といいます。
愚かな私は、血を吸われた上に、おまけに白い壁まで台無しにしてしまいました。孫の上塗りをしたわけです。
この話をしたところ、ある人が言いました。「汽車の窓でビールを買ったところが、いたんでいるようでした。でも捨てるのが惜しかったので飲んでしまいました。私は大変苦しみました」と。
血を吸った蚊に対する恨み、それを逃した悔しさ、金をかけて買ったビールに対するおしさ、これらを迷いと言うわけです。迷いとは、幻であって、本当にあるものではありません。こんなものに取り付かれては、いつまでたっても失敗や苦しみは深くなるばかりです。
済んでしまった事は、あっさりと認めて、それを忘れ、本心に立ち返って正しい生活に進むよう常に反省したいものであります。
何一つ滞るもののない中にただ苦しみを止めて苦しむ

法話集カテゴリの最新記事