とっさの言葉

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子供が走っていたとき何かにつまずいて、ばったり倒れました。ちょうど、そばに母親がいるのに気づいた子供は怒ったように、こう言いました。
「お母ちゃんが、そんなところにおるから、こけたんや」
いつだったか、ある身分の高い夫人が、道でないことをしている現場を主人に見られた時、
「あなたは私のいるものを買ってくださらないではありませんか」
と言ったといいます。
失敗をすると、理由にならない言い訳をとっさに口走るものです。自分をかばうとっさの言い訳です。反対に人の失敗に対しては、とっさになじる言葉が出ます。
ある朝のこと。まだ2歳にならない幼児に、無造作に魚を与え放にしていたところ、子供が急に泣き出しました。骨が刺さったのです。私は、無造作に与えっぱなしにしていた端を叱りつけたい気持ちが、むらむらと起こってきました。
その後の事、アメ湯ができたので、子供に飲ませようとした私は、それが熱いのでそのままにしておいて、多用のため、ちょっと座を立ちました。ところが、子供は急に泣き出しました。自分で飲もうとした子供は、それをこぼし、熱いいアメ湯が胸にかかったのでした。
「父ちゃん、どうしよったんナ」
と、私は妻からとっさに叱りつけられました。
こうしたとっさに出る言葉から、親しい者の間にも、いい争いが起こりかねません。
それを、おしとどめる事は難しいことですが、反省したいものです。また、そういう言葉を受けたとき、それは誰にもありがちな、無反省な言葉だと知って、軽く聞き流す智慧ある度量を持ちたいものです。
こんな例もあります。
それは文化勲章を受ける噂の高かった知人の三好達治氏は、井伏鱒二氏に
「あんなものくれても、わしはもらわんよ」
と言ったら井伏氏は、
「わしももらわんよ」
と答えたのは、くれないための負け惜しみだったのでしょう。ところがいよいよ受賞が決まった時
「もらうことにしたよ」
と三好氏が井伏氏に言ったら
「わしも、くれたらもらうよ」
と井伏氏は答えたという。

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