無我の境地とは ~愛の生み出し方について~

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寺院で瞑想をする女性の後ろ姿

無我の境地について考える

「煩悩を絶ち無我の境地に至るべきだ」という概念をあなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この「無我の境地」という言葉を聞くと、自分の願望を持つことが良くないことのようにも一見思えてしまいます。

実際に、特に私の周りにも、我欲を捨て去ることや自己犠牲に美徳を感じている人が少なくありません。

たしかに、自分の身をかえりみず他のものを優先させる行動をみると感動させられることが私にもあります。

しかしながら人間は本当に欲望を完全に断ち切る必要性があるのでしょうか。

そして我を無くすことは良いことなのでしょうか。

蜜をとるミツバチ

我を持つことは悪い事か?

私は、誰しも我を持っていて良いと思うのです。

なぜなら我が無ければ世界は面白味のないものになってしまうと感じるからです。

例えば、動物は我欲に忠実に生きています。

なかでも蜂は花から蜜を採って生きています。人間でいうところの食欲という概念が当てはまるのであれば蜂は食欲を満たすために蜜を取っているといえます。

そんななか蜂が蜜を集めるのをやめてしまったらどうなってしまうでしょうか。

きっと蜂の世界だけでなく植物界や動物界、人間界など各界が大打撃を受けてしまいます。

なぜなら蜂が蜜を集めてくれるおかげで結果的に私たちは生きていくことができているからです。

蜜を集める際に蜂の体に付着した花粉が植物たちの受粉を助けています。その行為は、その植物の実を食べたりその植物を住処としたりしている動物たちをも間接的に助けることになります。この連鎖は太古から続いているのです。

もし蜂が蜜を集めるのをやめてしまったら今地球上にいる多くの生物が絶滅してしまうかもしれません。当然、蜜を取らなければ蜂たちも死んでしまうでしょう。

ある種の「我」が無くなってしまうことは少なくとも私にとっては良い事ではないのです。

宇宙に存在する物すべてに富という価値が宿る

蜂と同じようにあなたも地球上のあらゆるものと関係性を持っています。あなたの我が完全に無くなってしまったら困る人が出てくるはずです。

このようなことから私は、我を無くしてしまうことが良い事とは限らないと思うのです。

たしかに我が強すぎると不具合が生じることもあります。何事も過ぎるとよくありません。

例えば蜂が全ての花の蜜を吸いつくしてしまったら、それはそれで世界はなりたたなくなってしまうでしょう。

例えば大金持ちたちが守銭奴のようにお金を貯金して、使うことを知らなければ貨幣経済は滞り多くの人の生活を圧迫することにもつながりかねません。

「我」は行き過ぎると悪を引き起こすきっかけにもなってしまうのです。

「我」が「行きすぎない」ようにする必要性は感じています。

胸を押さえ苦しむ女性

煩悩を絶つ必要性はあるか?

では煩悩はどうでしょうか。煩悩は絶つべきものなのでしょうか。

私の考えは、煩悩を無くそうと努力することは大切だと思いますが完全に煩悩を絶つ必要性は無いと思うのです。

それどころか人間は煩悩を持ち続ければ良いとさえ思います。

なぜなら悩んだり葛藤したりするからこそ見えてくる美しさがあるからです。

煩悩とは

さて、煩悩とは何でしょうか。

これがわからなければ話が進みません。

煩悩とは仏教用語で、岩波国語辞典によると「心身にまといつき心をかき乱す、一切の妄念・欲望」と説明されています。

ではこの煩悩を絶つ方法について考えてみましょう。

今の私には次の4つしか方法論が思い浮かびません。

  1. 「完全に欲望を消し去る」
  2. 「心を無くす」
  3. 「身体を無くす」
  4. 「欲望を持ちながらも全ての欲望が全く心をかき乱さない状態になる」

この4つについて考えてみましょう。

目

煩悩を無くす努力は愛につながる

主観的視点を確立する

こう考えると欲望を持ちながらもその欲望が全く心をかき乱さない状態を目指すのが最も良いように私は思います。

何の迷いも葛藤もない苦しみのない世界を作ればよいのです。

純粋に「したい」と思ったことを素直に実践・実現できればそれは可能です。

完全に主観的に生きればよいのです。

完全に!

鏡で自分を見る女性

客観的視点を身につける

ただし世の中はそんなにあまくありません。

ほとんどの人間は経験を通して上手くいかないことがあることを学んでいるものです。

無限の可能性を見出し絶望し心はかき乱されるのです。それと同時に、限界も感じ絶望し心はかき乱されるのです。

だからこそ、きっとあなたも様々な経験を通して煩悩という概念を学んだはずです。

客観的な視点から自分をみると今まで見えていなかったものが次々に見えてしまうのです。
手をつなぎ合う家族

包括的視点で判断する

人間は成長するにつれて自分の領域を広げていきます。

赤ちゃんには赤ちゃんの、少年には少年の、青年には青年の、大人には大人の世界が広がっていきます。

時間とともに周囲との関係性を学び、それに応じて我を変化させていくのです。

意にそぐわない事が起こるたびにそれを理解することができなくなり我が揺らぎ悩みや迷いが生じ苦しむことになります。

しかしながらそれを何度も何度も乗り越え乗り越え、より多くを巻き込んだ我を形成していくのです。

より包括的な視点で物事を判断できるようになるのです。

抱き合うカップル

考えを象徴する行動が表れる

主観的視点しか持たなかった人が客観的視点を得て包括的に物事を考えられるようになったらその都度行動に変化が表れます。

状況に応じてより適切な行動を起こせるようになるのです。

物事の解決策が見えるようになり迷いや苦しみを減らすことができるでしょう。

このような過程から生まれる象徴的な行動が、キリスト教でいうところの愛(LOVE)になり、儒教でいうところの忠恕(仁)になり、仏教でいうところの慈悲になるのです。

主観的・客観的・包括的・象徴的という人間が持ち得る4つの視点を意識していれば、皆がしてほしいことと自分のしたいことが一致し完全に主観的に生きることができる日がいつかやってくることでしょう。

頭を抱える女性

それでも煩悩は無くならない

ただそれでも事実上煩悩は無くなりません。

4つの視点を持つ人間の想像力には限界が無いからです。

煩悩の存在を認め煩悩と上手く付き合っていくことで苦しみのないポジションを探る、この瞬間のために努力するから愛が生まれるといっているのです。

煩悩を無くすこの方法は煩悩があることを認めることでもあるのです。

もし煩悩がいつか完全に無くなってしまったらどんなに評価されても虚しいだけです。

したいと思ってしていなければどんなに優しくなってもどこか虚しいものです。

虚しさは苦しみの基にもなりかねません。

海で黄昏る男性

死ぬことについて

そんななか煩悩を消すための解決策として、死ねばよいという考え方がまことしやかにささやかれています。

たしかに死ぬと「完全に欲望を消し去る」「心を無くす」「身体を無くす」ことができるかもしれません。

しかしながらこれはナンセンスだと思います。

まず、生きながらにして仏になろうと努力しているお坊さんを見ても自殺する必要性は感じません。

そもそも得るべきものとして無我の境地があり、それが死ぬこととイコールだというのなら、なぜお大師様がみんなの幸せを願い高野山の大師御廟に入られ、未だに生き続けているとされるのか私には理解できません。

もし煩悩を捨てるために死ぬのが良いというのであれば、それを悟った人たちは手っ取り早く次々に自害しているのではないでしょうか。

この「死」という方法論は考えない方が賢明だと私は思うのです。もちろん情愛や意志を無くす心の死も同じです。

そもそも「死」という選択肢は煩悩を無くしてより良く生きたいと願う人にとって最もナンセンスな方法論でしょう。

人間はいずれ死にます。それはそれで最後の手段にとっておけばよいのです。

パラダイムによって雲にもハテナにも見える

「空」には色んな意味がある

幸か不幸か仏教の重大な教えの一つに「空」というものがあります。

この字は「空しい(むなしい)」と読むこともできます。(「虚しい」と「空しい」は同じ読み、同じ意味です。)

無我の境地と照らし合わせて考えるとまるで虚しい人生を送るように誘導しているかのようにも感じます。

そんななかかの有名な一休さんは悟りを開いたとき師匠に「お前はまだ悟っていない」と言われ「これが悟りでないならば私は悟りなどいらない」と答え悟ったことが認められたという逸話を耳にしました。

これは愛のない世界など価値がないと言っているように思えてなりません。

※おそらく「空」の神髄は「empty」ではなく「matrix」でしょう。

孟子は次のように言っています。

「万物皆我に備わる。身に反りみて誠あらば、楽これより大なるはなし。恕を強めて行う、仁を求むることこれより近きは莫し」と。

弘法大師空海は次のように言っています。

「唯、大日如来あり手、無我の中において大我を得るなり」と。

私はあなたに、大きな我を持ち欲深く目標を持って生きてほしい!そう強く願います。

依存状態から自立を目指し相互依存状態の素晴らしさへの理解を深めれば、心を乱すものは減り「我」はより大きくなることでしょう。

それで良いと今の私は思うのです。

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